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村上龍エッセイ集「すべての男は消耗品である。」完全版が電子書籍で発売開始

 村上龍の作品は、小説に限らずエッセイも大好きだ。中でも、「すべての男は消耗品である。」シリーズは、村上龍が1984年から実に30年にわたって書き続けてきた代表作である。現在、同作品はVol.1〜Vol.13まで発売されているが、連載30週年を記念し、完全版がKindleにて電子書籍として発売されることになった。

リンク:村上龍 「すべての男は消耗品である」Vol1~13+完全版 連載30周年記念(Kindleストア)

 氏が運営するメールマガジン「JMM(Japan Mail Media)」より、その発売を知らせるメールが昨日届いた。
 その本文に、「村上龍メッセージ」と題した、完全版の前書きとして掲載されている文章が載っていたので引用したい。

村上龍メッセージ (完全版 前書きより)

 まさか、30年も連載が続くとは思わなかった。すべては、K.K.ベストセラーズの小野典子さんとの出会いからはじまった。時期としては、ちょうど『愛と幻想のファシズム』という長編小説の取材で、北海道、帯広近郊の糠平湖畔で3週間のアウトドア体験を終えたころだ。

 『すべての男は消耗品である。』というタイトルが生まれた経緯について、「VOL.1 バブル前夜」の冒頭で紹介したと、なぜかずっとそう思っていたが、読み返してみると、言及がなかった。糠平湖近く、大雪山系の山林での、エゾライチョウのハンティングのあと、『すべての男は消耗品である』というタイトルを思いついた。エゾライチョウは、「つがい」でいることが多く、ハンターは必ずメスを狙う。メスが撃たれると、銃声に驚いて当然オスは逃げるのだが、必ず戻ってくる。そして、ハンターに撃たれる。オスを撃ってしまうと、逃げたメスは、決して戻ってこない。いいとか悪いとかの問題ではなく、そう刷り込まれているのだ。極端なことを言うと、オスは1羽いればいいわけで、種の保存として理にかなっている。

 そのとき、季節は秋で、エゾ鹿たちが伴侶を探し合うころだった。毎晩、彼方の山々から、メスを得られなかった若い牡鹿の鳴き声が聞こえた。あれほど痛切な鳴き声を聞いたことがなかった。オスは最悪1頭いればいいわけで、メスを確保できないオスは子孫を残さずに淘汰されていく。もちろん大自然の掟が、そのまま人間社会に当てはまるわけではない。だが、大自然の掟のほうに、生物としての人間の本質がある、そう思った。

 30年、いろいろなことがあった。わたし自身、変化した部分もあるし、変わらないところもある。フィジカルな変化は露骨だ。体力は確実に衰える。「歳は取ってもいつまでも元気、若い者にはまだまだ負けない」などと平気に口にする年寄りは、嘘つきだ。歳を取れば取るほどフィジカルに強くなっていく種は地球上に存在しない。あえて言えば、がん細胞だけだろう。

 30年間、変わっていないのは、わたしがいまだに小説を書いているということだ。30年間、デビューしてからだとほぼ40年間、継続して小説を書き発表してきたので、そんなことは当然のことのように思われているかも知れないが、年を経るにつれてやがて小説を書かなくなる作家のほうが圧倒的に多い。自慢したいわけではない。事実を言っているだけだ。

 なぜわたしは小説を書き続けるのか、その答はすべて、この「完全版」の中にある。

 30年という年月を織り込んだ「完全版」を電子書籍で出版するに当たって、K.K.ベストセラーズの小野さんに、最大限の感謝と敬意を表したい。小野典子という編集者がいなければ、『すべての男は消耗品である。』という作品は生まれようがなかった。

2014年5月 村上龍

 小説は、村上龍の思考と知識と意志が「物語」という形をとって表現されたものだが、エッセイというのは、氏の考えていることがもっとダイレクトに書かれている。身も蓋もないことがありありと、これ以上ないというくらい簡潔な文章で。
 現在の日本を覆う様々な経済的、文化的、政治的事象について、氏がどのように考え、何を伝えようとしているのか、このエッセイ集で垣間見ることが出来る。「隠蔽されがちな事実を正確に伝えようとしているだけだ」と書いていたのもこのエッセイ集だと思うが、まさにそういった氏の姿勢がそのまま文章となっている。

 私は村上龍の小説から、大切なことをたくさん学んだと思っているが、同じように氏のエッセイからも多大な影響を受けている。今回の完全版の発売を機に、改めて彼の思考の歴史に触れてみようと思う。

 Kindle版は単本でも発売されていて、1冊250円で購入できるが、完全版は13冊分収録されていて1,250円と大変お買い得になっている。単本で読んでみて気に入った方は是非、完全版を購入してみてはいかがだろうか。

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コメント

  1. […] 参照:「村上龍エッセイ集「すべての男は消耗品である。」完全版が電子書籍で発売開始」 […]