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どこからが「悪」なのか。映画『プリズナーズ』

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 小説にせよ映画にせよ、結末がその作品を大きく印象付ける。どのような終わりを迎えるのかによって、その作品を好きになることもあれば、嫌いになることもある。

 私が個人的に、「この終わり方は良かった!」と思う作品はいくつかある。
 小説で言えば、「五分後の世界」、「半島を出よ」、「海辺のカフカ」の3作が特にお気に入りだ。映画だと、「インセプション」、「マイ・ブラザー」、「パーフェクト・センス」の終わり方は最高だと思う。

 よくハッピーエンドとかバッドエンドとかいう表現で、どちらが好きかを論じたりする。私はハッピーエンドなストーリーにはまったくと言っていいほど惹かれないのだけど、かといってバッドエンドだったらいいのかというとそういう訳でもない。私なりに好みの「終わり方」というものがある。

 それはどんな終わり方なのかというと、「結論を出さずに、余韻を残す」というもの。
 「結末はこうなりました」と、作品が答えを提示するのではなく、その作品を見たものが「その後」を想像せずにはいられないような終わり方だ。「インセプション」の終わり方はまさにその最たる例で、「えっ、そういうこと?」という、想像力を喚起させるような終わり方がとても好きなのだ。そして、その先にあるのはポジティブなものではないほうがいい。

 「パーフェクト・センス」も、一見ポジティブな終わり方のようにも見えるが、捉えようによってはあれほど残酷な結末もない。そういう、「このあと、どうなるんだろう」と考えこんでしまうような結末が好きなのだ。

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 昨日見た映画、『プリズナーズ』もそういう「終わり方が秀逸」な作品だった。

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映画『プリズナーズ』

 この映画は、「X-MEN」で主役を演じたヒュー・ジャックマンと、前述した「マイ・ブラザー」にも出演しているジェイク・ジレンホールの共演作。

 ヒュー・ジャックマンが演じるのは、娘を誘拐された父親役で、ジェイク・ジレンホールはその事件を担当する刑事役として登場する。

あらすじ

 ペンシルベニア州のとある田舎町。小さな工務店を営むケラー(ヒュー・ジャックマン)は愛する妻と娘、そして隣人の一家と共に感謝祭を迎えていた。だがその最中、遊びに行ったはずのケラーの娘が、隣人の娘と共に行方不明になってしまう。
 この事件を担当することになった刑事ロキ(ジェイク・ジレンホール)は、二人が何者かに誘拐されたと見て、現場付近で目撃された不振なRV車を手がかりに、それに乗っていた青年アレックスを拘束する。しかし、アレックスは10歳程度の知能しかなく、まともな証言も決定的な証拠も得ることはできずに、釈放の期限を迎えてしまう。
 一向に進展しない警察の捜査に業を煮やしたケラーは、アレックスに詰め寄り娘の居場所を聞き出そうとする。その際、アレックスが発した一言から、ケラーは彼が犯人だと確信する。
 愛する娘を取り戻したいというケラーの思いは、次第に暴走していき、ついにはアレックスを拉致監禁して、無理やりにでも娘の居場所を吐かせようとする。一方、捜査を進めていたロキ刑事は、別の容疑者の存在を突き止めようとしていた。_Wikipedia(カッコ内は筆者追記)

被害者が加害者へ変わる瞬間

 この映画では、愛するものを奪われた「被害者」であるはずの男が、次第に暴走を始め一線を越えていく様がリアルに描かれている。犯人であると信じる男を、自らの手で追い詰め罰しようとするケラーは、いつからか「加害者」の側へ足を踏み入れてしまう。

 村上春樹が確か『ノルウェイの森』で、「人がこんなにも悪になれてしまうということに驚いた」みたいなことを書いていた(ノルウェイの森だったはず)。私がこの映画を見て感じたのも、「人は、状況が変わればどこまでも悪になれる」ということだった。と同時に、この男(ヒュー・ジャックマン演じるケラー)がやっていることの、いったいどこからが悪なのだろう、とも。

 最後の方でケラーの奥さんが、「彼はいい人なの。すべて、娘を取り戻すためにしたことなの」と涙ながらに語るシーンがある。実際にその通りなのだろう。愛する娘のためなら、何だってするという父親はおかしくも何ともない。だが、そこには明らかな暴力と狂気があった。

 そして、被害者から加害者へ変貌してしまったのは、彼だけではなかったのだという事実も次第に明らかになる。

 あまり映画の内容は詳しく書きたくないが、エンディングの方でジェイク・ジレンホール演じる刑事ロキが病院へ車を走らせるシーンがある。このシーンではほんとうに手を握りしめ、身体に力が入ってしまうほどの切迫感があった。

 この映画も、「その先」を示唆するような終わり方になっている。作品を通してヘビーなテーマとシーンが続いたが、最後の最後で希望を感じさせるような結末だった。

 私の「終わり方が好きな映画」に、また1作品が加わった。

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