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本当に幸せなことと、本当に悲しいことは似ている

 少し前の話になりますが、川村元気さんの「億男」という小説を読みました。

 「億男」は、雑誌「BRUTUS」で連載されていたもの。BRUTUSを読むようになったのはここ最近のことなのですが、連載されていたこの小説を読んで、「おもしろいな、これ」と、印象に残ったことを覚えています。

 かと言って、毎回欠かさずに読んでいたかというと、そういうわけでもありません。ただ、ある号で目にした文章がとても印象的で、強烈に脳裏に焼き付きました。そして、単行本として発売されたら必ず買おうと心に決めたのです。

 その、強烈に脳裏に焼き付いた文章というのが、今日のタイトルでもある『本当に幸せなことと、本当に悲しいことは似ている』というもの。

 今日は、なぜこの文章が印象に残ったのか、この文章を読んでどのようなことを考えたのかということについて書いてみたいと思います。

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文章には、出会うタイミングがある

 これはいろんなことに対して言えることなのかもしれませんが、文章にも出会う「タイミング」というものがあります。そのときの自分を取り巻く環境、考え方、求めているものなどによって、「心に残る文章」というのは変わってきます。若い頃にとても感動した文章でも、今読み返してみるとただ青臭いだけに感じるかもしれないし、当時はわけの分からなかった文章でも、今読むとその意味するところを理解できるかもしれない。

 自分の琴線に触れる言葉や文章が変化するのは、自分も同じように変化しているからだとも言えます。

 今の自分のアンテナに引っかかる言葉だけが、自然と浮き上がり、自分の目に止まるようになる。どこに、何に意識をフォーカスしているかによって、その基準は変わってきます。

 もしかしたら、前述した『本当に幸せなことと…』という文章は、2年前に読んでいたらそんなに心を惹かれなかったかもしれません。もっと別のところに興味を持ったかもしれないし、あるいは、同じように心に残ったかもしれない。

 いずれにせよ、この文章を初めて目にしたときの私は、そういった「言葉」や「文章」を求めていたんだと思います。自分が漠然と感じていることや、もやもやした鬱憤のようなものを明文化した、こんな文章を。だからこそ、この文章をひと目見た瞬間に、「これだ!」と強く印象に残ったのでしょう。

極端な何かを求めるならば、極端な何かを受け入れなければならない

 人は何かを強烈に追い求めるとき、同時に、それを「手に入れられないかもしれない」というリスクも冒しています。求める思いが強ければ強いほど、その存在が遠ければ遠いほど、その反動となって返ってくるものも、同じくらい強烈なのです。

 誰かを心の底から求めるから、その人を失ったときの悲しみは計り知れない。中途半端な欲望には、中途半端な絶望しかやってこない。簡単に手に入るようなものから得られるものは、大した喜びではありません。自分のすべてを投げうってでも何かを手に入れたい、成し遂げたいと思うから、それが叶わなかったときの絶望は耐え難いものとなるのです。

 これはあくまでイメージです。
 自分の身体を、強烈なゴムで木に縛りつけるとします。そこから、あなたはそのゴムに繋がれたまま、自分の欲しいもの、手に入れたい対象を取りに行かなければなりません。

 自分の近くにあるもの、手を伸ばせば楽に届く範囲のものだけを欲するのであれば、そのゴムが邪魔になることはありませんし、その反動を受けることもありません。しかし、そのゴムの張力に逆らいながら、遠くのもの、はるか遠くにぼんやりと見える何かを取りに行こうとするのであれば、張力に反発しながら進んでいく必要があります。

 ゴムが身体を締め付け、もと居た場所に引き戻そうとします。その張力に逆らい続け進んだとしても、あなたの欲するその「何か」が手に入るとは限りません。そしてあなたが遠くに進めば進むほど、それを手に入れられなかったり、途中で諦めたりしてしまったときには、強烈な力で反対側へ吹き飛ばされてしまいます。

 求めるものが大きければ大きいほど、それを手に入れた時の喜びと、失った時の絶望はトレードオフなのです。

 この上ない歓喜の裏には果てしない絶望があり、眩い幸福とともに受け入れがたき不幸が存在する。

 『本当に幸せなことと、本当に悲しいことは似ている』という文章を読んで感じたことを書いてみたのですが、表現するのがものすごく難しいです。

 つまるところ私が言いたいのは、人生において、ひとつくらいは「その身を投げうってでも」手に入れたい何か、成し遂げたい何かを見つけたいなということ。ゴムが千切れそうになっても近づきたいと思う何かを。

 たいして良くもないけれど、たいして悪くもない。可もなく不可もなく。
 そんな人生はなんだか、つまらないなぁと思うのです。

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