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【香川旅日記 豊島編⑥】自分の心臓の音を録音する「心臓音のアーカイブ」

 村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」という作品がある。コインロッカーに遺棄され、自閉症児だと診断されたキクとハシは、治療の一環で、ある音を聴かされる。何の音だか分からずに聴いていた二人だが、次第に安心感と幸福感に包まれるようになる。二人は後に、それが「心臓の音」だったと知る。

 私が豊島で必ず訪れようと決めていた場所、それが「心臓音のアーカイブ」だ。
 ここには、9ヶ国、1万5千人を超える人々の心臓の音が収録、保存されている。フランスのアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーが2008年から始めたプロジェクトで、氏が集めたさまざまな心臓音を聞くことができる。

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※これが「心臓音のアーカイブ」の入り口

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 心臓音のアーカイブは、3つの部屋で構成されている。
 心臓音が電球の明滅とともに爆音で鳴り響くインスタレーション空間「ハートルーム」、録音された人々の心臓音を聞くことができる「リスニングルーム」、そして、希望者の心臓音を録音するための「レコーディングルーム」だ。

 まずはハートルームに入ることに。幸い先客はおらず、貸切状態だった。中は真っ暗で、心臓の音が打撃音のように鳴り響いている。そして、その心臓音に合わせてライトが一瞬点灯しては消える。まず、心臓音を爆音で聞く機会なんてそうそうない。それも、心臓音に「似せた」音ではなく、ほんものの心臓音なのだ。

 真っ暗な空間の中で、「ドンッ、ドンッ」という心臓音を聞いていると、とても不思議な感覚に包まれる。瞑想に近い感覚だった。私たちは自分の心臓音ですら耳にする機会をほとんど持たない。ましてや、見たことも会ったことも無い他人となればなおさらだ。

 リスニングルームは、この施設で録音された心臓音を、パソコンからヘッドフォンで聴くことができる。ランダムに再生もできるし、人の名前で検索することもできる。再生すると、その人の名前が表示される。
 私は何人かの心臓音を聞いてみたのだけど、やっぱり人によって微妙に音に違いがある。「ドクッ、ドクッ」と力強い鼓動を刻んでいる人もいるし、「トクッ、トクッ」と淡々としたリズムの人もいる。テンポも、音の大きさも皆違っていた。当然といえば当然なのかもしれないけれど、そういった違いを「実際に」耳にしてみてみると、なんだか不思議な感じがするものだ。

 ほんとうは、私も自分の心臓音を録音しようと思っていた。けれども、リスニングルームで数人の心臓音を聞いてみて、その気がなくなってしまった。ハートルームのように、ものすごく大きな音で聴くとものすごく迫力があるのだけど、ヘッドフォンで聴くとなんだかもの足りない感じがした。
 でも、録音した心臓音はちゃんとパッケージに包んで、音楽のCDみたいな装丁で貰うことができる。たしか2千円ほどかかったと思うけど、記念品としてはとても価値のあるものだと思う。

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 そして、この心臓音のアーカイブは、とても素晴らしいロケーションにあった。写真のように、まるで南国のビーチのような景色が広がっていた。時期によっては入館するのに行列ができることもあるそうなのだけど、私が行ったときはほとんど人がおらず、景色も独り占めすることができた。

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 豊島は、素晴らしい景色と特殊な空間にあふれている島だった。

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