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村上龍の長編最新作『オールド・テロリスト』が発売

ファイル 2015-06-26 22 19 54

 村上龍の長編小説最新作、『オールド・テロリスト』が発売された。氏が編集長を務めるメールマガジン「JMM(ジャパン・メール・メディア)」がその発売を知らせてくれた。

 書きおろしとしては、2012年に発売された『55歳からのハローワーク』以来、3年ぶりとなる新作である。

 帯には、こんな刺激的なコピーが添えられている。

 怒れる老人たち、粛々と暴走す。
「年寄りの冷や水とはよく言ったものだ。年寄りは、寒中水泳などすべきじゃない。別に元気じゃなくてもいいし、がんばることもない。年寄りは静かに暮らし、あとはテロをやって歴史を変えればそれでいいんだ」

 どんな作品なのか、私もまだ読み始めたばかりで詳しくは書けないので、あとがきから一部を引用したい。

後期高齢者の老人たちが、テロも辞さず、日本を変えようと立ち上がるという物語のアイデアが浮かんだのは、もうずいぶん前のことだ。その年代の人々は何らかの形で戦争を体験し、食糧難の時代を生きている。だいたい、殺されもせず、病死も自殺もせず、寝たきりにならず生き延びるということ自体、すごいと思う。彼らの中で、さらに経済的に成功し、社会的にもリスペクトされ、極限状態も体験している連中が、義憤を覚え、ネットワークを作り、持てる力をフルに使って立ち上がればどうなるのだろうか。どうやって戦いを挑み、展開するだろうか。_あとがきより

 まず最初に驚いたのは、『希望の国のエクソダス』という作品で登場したセキグチというフリージャーナリストが、再び主要な登場人物として描かれていることだ。同じ登場人物が、異なる作品で登場するのは珍しい。
 ただ、『希望の国のエクソダス』の頃のセキグチとは大きく変わってしまっていて、冒頭からいきなりショックを受けてしまった。

 先に紹介した通り、本作ではおもに老人たちが主要な登場人物となる。主人公や登場人物の年齢が高くなっているのが、最近の村上龍の作品の特徴として挙げられる。
 『心はあなたのもとに』では、50代の実業家が主人公だったし、前作の『55歳からのハローワーク』については、タイトルの通り定年を迎えつつある男女の葛藤や再起が描かれていた。『55歳からの〜』では、自分と同年代である登場人物に「寄り添うようにして書いた」と、どこかで書いていたのを読んだ覚えがある。そして、今回の作品では70歳〜90歳までの人物が登場するらしい。

 登場人物の年齢層の変化というのは、もちろん、村上龍自身の年齢的な変化も影響しているのだと思う。氏のデビュー作である『限りなく透明に近いブルー』は、ロックとドラッグとセックスに明け暮れる自堕落な若者を生々しく描いていた。そして、当時のことを村上龍はこう振り返っている。

わたしは、ロックとファックとドラッグの世代と言われたが、それはロックとファックとドラッグも、まだあまり知られていなくて、大人たちをびっくりさせることができた証拠だ。_『すべての男は消耗品である』

ドラッグカルチャーにしても、ロックやフリーセックスにしても、大人というか年寄りはあまり知らないだろう、だからそんな世界を実際に見聞きしたことのある自分にはアドバンテージがある、と思っていた。小説は情報だから、珍しいもの、自分しか知らないことはそれだけで価値があると思っていたのだった。_『すべての男は消耗品である』

 つまり、自分が持つ情報の優位性を利用して、自分にしか書けないことを書いたんだ、と村上龍は言う。

 『限りなく透明に近いブルー』に始まり、名作『コインロッカー・ベイビーズ』や、最近でいうと『歌うクジラ』のように、少年や少女が小説の主要なキャラクターを担うような作品は、もう書かない(書けない)のかもしれない。
 それはそれで寂しくもあるのだけど、じゃあ今度はどんなモチーフを、どんな表現とストーリーで描くのか、楽しみでもある。今の村上龍にしか書けないこととは、どんなことなんだろうと。

 だから、これからも、私は村上龍の作品が出れば一目散に書店に買いに走り、そのページを繰ることだけを楽しみにして一日を過ごすのだと思う。

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