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「どう生きるべきか」なんて考えたことも無い。常に考えてきたことは「どうやって生きていくか」だ。by 村上龍

 以前、「好きなことを仕事にする必要なんてない、自分の得意なことをやろう」という趣旨のエントリを書いたことがある。

自分の「好きなこと」ではなく、自分の「得意なこと」を仕事にしたほうがいい
 「好きなことを仕事にしたほうがいい」という意見には、賛否両論あるかと思う。仕事というのは人生の大半を費やすものなのだから、好きなことを仕事...

 先日一緒に酒を飲んでいた友人が、別に好きなわけではないけれど、自分には何ができるのかと真剣に考えて、これしかなかったからやってるんだ、というニュアンスのことを話していた。私は、「それでまったく問題ないと思う」と返した。
 好きなことを仕事にできればそれに越したことはないと思うけれど、そうではないからといって、うしろめたさや焦りを感じる必要なんてまったくない。自分がどれくらいの質の仕事をこなせているかということのほうが、はるかに重要だと思う。

 私のこの考え方は、村上龍の影響を多分に受けている部分がある。というか、ほとんどが村上龍の受け売りだったりするので、特に気に入っているものをいくつか引用してみたい。

 まずは『ラストワルツ』というエッセイの、「実はわたしの肺活量は6000近くあった」という章から。

 わたしは、生まれてからこれまで、「どう生きるべきか」などと考えたことはないし、今も考えない。わたしが子供のころから考えてきたのは、「どうやって生きていくのか」ということだった。つまり、何をして食っていくか、という具体的で切実な問いだった。わたしは、幼稚園のころから、「お前はサラリーマンにはなれないし、ならないほうがいい」と両親や親類や教師たちから言われ続けた。4歳、5歳のころから、「給料取りにはなれないのか、じゃあどうやって生きていけばいいんだろう」と考えるようになったのである。

 「自分は小説家になりたかったのではなく、小説家になるしかなかったんだ」というのは、村上龍が結構いろんなところで書いているが、幼稚園児の頃からそんなこと言われてたんだな。笑

 続いて、大好きな小説である『心はあなたのもとに』から。
 風俗で働く香奈子が、京都で目にした騎馬警官に対して「きっと仕事に誇りを持っているんだろうな」と感じたと話す。それに対し、西崎はこのように答える。

 そうだね、あの騎馬警官は確かにかっこよかった。でも、どうなのかな。あの警官が自分の仕事に誇りを持っているかどうかは、他人にはわからないし、あと、これは個人的な考えで、一般的じゃないと思うけど、仕事に誇りなんてものが本当に必要なのかどうか、おれは少しだけ疑問なんだよね。いや、おれが金融の仕事をしているから、こんなことを言ってるわけじゃないよ。それで、おれが信頼するあるアメリカ人の有名な投資家が言ったことなんだけどね。人生でもっとも大事なことは、殺されないこと、つまり、死なないことで、二番目が楽しむこと、そして三番目に世界を知ることだって、あるとき教わったんだよ。

死なない、っていうのは、ミもフタもない言い方をすると、何とか食っていくってことだと思う。仕事に誇りを持つみたいなことより食っていくっていうことのほうが重要ってわけじゃなくてさ、基本的ってことだけどね。誇りの持てる仕事を、なんて雑誌やテレビでよくそんなことを言う連中がいるけど、吐き気がするんだよね。よくそんな勝手なことを言えるなと思うよ。人生でもっとも大事なのは、誇りもへったくれもなく自分の力で何とか食っていくことだよ。香奈子だって、何とか自分の力で食っていってる。依存はしていない。誇りとか、そういうことの前に、何とか食っていくって姿勢のほうが優先すると思うんだよ。

 個人的に「死なないこと、楽しむこと、世界を知ること」というフレーズが大好きで、自分のモットーにしていたりする。

 確かに、仕事に誇りを持つ必要性なんてないのかもしれない。でも、自分に与えられた仕事を責任を持って最後まで果たすとか、自分が出せうる最良のアウトプットを目指すとか、そういった姿勢は必要で、それは誇りの有無とは関係のないことだ。
 どうやって生きていくか、その手段として自分が選んだものについては責任を持つ必要があるし、好きだろうが嫌いだろうが、誇りを持っていようがいまいが、真剣に取り組む必要がある。

 最後に、再び『ラストワルツ』から引用して終わりにしたい。

「どうやって生きていくか」という問いをクリアした人だけが、ライフスタイルのチョイスに関わることができるわけで、もっとも本質的で根源的な問いだと思うのだが、不思議なことに、そんなことを問題にする人は、昔も今もほとんどいない。

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