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生きる術としてのミニマリズム。極地を旅する写真家が愛用する96の旅道具

 石川直樹さんのことを知ったのは、とあるYoutube動画を見たのがきっかけだった。その番組で「あなたの必需品は何か」と聞かれた彼は、こう答えた。

「必需品は何もないこと。装備を知恵で代替すること。裸に近い状態で生きていけること。それが、いちばんカッコいい」

 そんな彼の考え方や姿勢に僕はとても感銘を受け、すぐに彼のファンになってしまった。

必需品は「何もない」こと。ありあわせのものだけで生きていく、究極のミニマリズム
 「あなたの必需品は何ですか?」  こう聞かれたら、あなたは何を自分の「必需品」として挙げるだろうか?  携帯電話、パソコン、車、家...

 その流れで彼の著書、『すべての装備を知恵に置き換えること』を読み、彼の書く文章までも好きになった。

 石川さんは、極地を旅する探検家であり、写真家である。
 2001年に世界最年少(当時)で七大陸最高峰への登頂を達成したり、北極から南極までを縦断したり、とにかく行動のスケールがハンパない。辺境から、ときには都市まで、あらゆる場所を旅しながら作品を発表し続けている。

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極地を旅する探検家の道具

 そんな石川さんが、『ぼくの道具』という新著を刊行された。タイトルのとおり、石川さんが愛用されている道具を紹介している本なのだが、「道具」という言葉を使うあたりがいかにも探検家らしい。実際、本著では石川さんが2015年夏に敢行したK2長期遠征の際に使用した道具たちを中心に紹介されている。

 彼が旅を続けていく上で、厳選され研ぎ澄まされていった道具たち。それらの写真と、それにまつわるちょっとしたエピソードが添えられている。

 この本のおもしろいところは、単なるモノ紹介に終始するのではなく、「テントの中での暮らし」や「極地でどのように仕事をこなしているか」などの、裏話的な文章も織り交ぜられているところだ。

 例えば、極地でテント生活を送る際の、テントの中はどんな間取りになっているのかが、イラストで図解されている。また、1日のタイムスケジュールやトイレ事情、山での仕事術(?)のようなものまでが記されていて、読んでいて飽きることがない。登っているとき以外はひたすらテントの中で待機することが多いらしく、そういうときのために小型のDVDプレイヤーを持って行ったりするそうだ。

 そんな、実際に行ったものにしか経験し得ない体験談が随所に盛り込まれている。本著で紹介されている道具たちを使って、彼がどのように山での生活を送り、どんなことを考えているのかを垣間見ることができる。

生きる術としてのミニマリズム

 石川さんの発言や書かれている内容の節々からは、必然的に「ミニマリズム」という言葉が思い浮かぶ。まえがきにもこのように書かれている。

 生きていくうえで、身の回りの道具は少なければ少ないほうがいい。旅をするうえで、身につける装備も少なければ少ないほうがいい。ほうとうに必要な道具について考えていくと、見かけだけよくても役に立たないものや、あると便利だけどなくても大丈夫なものが何なのかも分かってくる。

 しかし、それは昨今流行りの、ライフスタイル、ファッションとしてのミニマリズムではない。彼のそれは、極地を生き抜くために、いわば必要条件として身につけたものなのだ。

 考えてみれば当然だろう。彼の場合、どんな装備で、どんな格好で登頂に臨むかというのは、そのまま生死に直結する死活問題なのだ。必然的に道具の選択はどこまでもシビアになり、携帯する装備は極限まで削ぎ落とされる。

 本著にミニマリズムという言葉はいちども登場しなかったが、彼の思想の根底にはその精神がしっかりと根付いているように思われる。

 いくつか印象に残った言葉を引用したい。

街に暮らしていると、寒ければ暖房をつけ、暑ければ冷房をつける。気温に合わせてセーターを着たり、Tシャツを着たりする、ぼくたちはいつしか自分自身を変化させることをあきらめて、自分の外側を変えて生きていくという術を身に付けた。_P003

すべての装備を知恵に置き換えて、素手で、裸足で、丸腰で生きていけたらいい、と今でも思っている。_P003

大切なのは、道具に頼らず、まずは自分自身をその環境に適応させていく努力をすることだ。_P004

道具の選択に、ルールなどない。自分の身体に合わせて、その場で選びとるしかないのだ。_P010

常に更新し続けること

 そんなふうに、道具については人並みならぬこだわりを持っている石川さんだが、同時に「ほとんどの道具は少しでも新しい方がいい」とも述べられている。道具の選択が生死を分ける高所登山では、という前置きがついているが、これは少し意外に感じた。

 自分だけのマスターピースを大事に大事に、何年も使い続けることも大切だろうけど、新製品に目を背け、古道具をただ愛でていても仕方ないと石川さんは言う。

 技術は進化するし、新しい素材や製品は次々と生まれてくる。だから、今日のベストが明日のベストだとは限らないし、万人に共通するものでもない。今、この時点でのベストを、自分なりに考えて選び取っていくしかない。そして、それらは常に更新され続けるべきだと書かれている。

 道具をとっかえひっかえすることは、芯がなくブレていると受け取られてしまうかも知れないが、決してそんなことはないのだ。自分に合わせて環境を変えるのではなく、環境に合わせて自分が変化していくためには、自分が身につけるものや使う道具も、同じように変化して然りなのである。

 すべての装備を知恵に置き換える努力をしつつ、自分にとって必要不可欠な道具だけをもって、未知の荒野を歩こう。道具に縛られるのではなく、道具によって自由になる。そんな旅を、これからも続けていきたいと思っている。_あとがき

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