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現在と未来、どちらの幸福を最大化すべきか

 先日友人と話していて、色々と考えることがあったので、今日はそのことについて書いてみたい。

 彼は高卒で働き出してから、ずっと老後のための保険に入っているのだという。さらに、何かあったときのためにと、せっせと貯金もしているそうだ。世間一般では彼のような人間のことを「堅実だ」などと言うのかもしれない。将来のために備えるというのは、基本的には褒められるべきことなのだろう。比べて僕はというと、生命保険にも入っていなければ、貯金も大してない。もちろん、老後のために何か準備をしているわけでもない。「これで俺の老後は安泰だよ」と嬉しそうに話す彼を見て、僕は村上龍が何かのエッセイで書いていた文章のことを思い出した。

 村上龍は、23歳のときに「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞を受賞し、作家デビューを果たした。そして、27歳のときに「コインロッカー・ベイビーズ」を書き上げ、小説家として生きていく決意をしたのだという。
 自らの経験をそのまま描いたという「限りなく透明に近いブルー」を読んだことのある方はご存知かも知れないが、当時の村上龍はロック、ドラッグ、セックスに溺れる自堕落で破滅的な生活を送っていた。そんな青年が、23歳という若さで作家デビューなんてしたものだから、それまでは想像もできなかったような大金を手にすることになる。当然、自分を取り巻く環境も大きく変わることになる。
 
 村上龍はその当時を振り返って、「若くしてデビューしてよかった」と書いていた。なぜなら、当時の自分には、それだけの快楽を享受できるだけのキャパシティがあったからだと。歳をとってからデビューしたって、そこから得られるであろう快楽や喜びを、十分に消化できなかっただろう。はっきりとした内容までは覚えていないが、確かこんな内容だったと思う。

 なぜ、友人の話を聞きながらそんなことを思い出したかというと、自分のお金や時間を将来のために費やすということは、現在の自分の一部を犠牲にするということに他ならない、そんなことを考えたからだ。もう少しハッキリと言うと、今20代や30代の人たちが、70歳、80歳になったときのためにと、今という時間の一部を犠牲にしたり、稼いだお金を貯蓄に回したりするのを見ると、僕は少し首をかしげたくなるのだ。

 もちろん、お金はあるに越したことはないし、そういう人たちは「安心」という精神的な安らぎを買っているのかもしれない。そうすることで、将来への不安を少しでも減らそうと努力しているのかもしれない。そして実際に、そのおかげで将来救われることがあるのかもしれない。
 加えて、日本人というのは、未来のために今を耐え忍ぶというメンタリティを強く持った人種だと思う。未来はきっと明るいに違いないと肯定的に捉えるのではなく、これだけ苦しい思いをしたのだから自分は報われるはずだと、盲目的に信じてしまうきらいがある。

 例えば、20代の1年と、70代の1年は、どちらがより価値のあるものだろうか。30代の1年と80代の1年ではどうだろう。

 僕たちは、現在と未来、どちらの幸福をより最大化させるために、お金や時間を費やし、労力を払うべきだろうか。

 僕は思うのだけれど、人生にはそのときどき、その一瞬一瞬にしか感じることのできない喜びや快楽、感動がある。わけの分からない衝動に突き動かされ、何もかもかなぐり捨てて取り組むべき対象というものが、確かに存在するのだ。もし仮に、それらが「老後のため」なんていう理由で阻害されてしまったとしたら、僕はなんてもったいない話だろうと思う。年老いた自分が、体力も好奇心も(性欲も)あふれる今の自分よりも、そんなに大切なのかと問いたくなる。

 僕がこのエントリで書きたいことは、「将来のことなんて気にせず、今を楽しめ」なんてことではなく、「やっぱり将来のためにこつこつ貯金しましょう」でもない。どちらが正しいとか、どうあるべきだなんていうことを言いたいわけではない。

 ただ、自分は現在と未来、どちらの幸福をより最大化させたいのか。今自分がやっていることは、どちらの幸福に寄与するものなのか。どちらにどれくらいの重きを置きたいのか。そういったことに自覚的であるべきだということだ。そうすることで、自分はいったいどんな人生を送りたいのか、何を最優先事項として生きていくのかということを、見直すきっかけになる。

 将来のため、老後のためと言っているけれど、そのためにあなたは「今」という貴重な時間や機会を少なからず犠牲にしているのだという事実を、きちんと理解したほうがいいのではないだろうか。

 もちろん、これは個々人の置かれた状況や人生の展望、好みによって大きく分かれるだろう。でも、今、この瞬間の幸福を最大化させるために、少なくないお金や時間をつぎ込むというのも、僕としてはまっとうな考えであるように感じるし、ある意味合理的だとも思う。

 これをお読みのあなたは、現在と未来、どちらに重きを置いて日々を生きているだろうか。

人は幸せを未来に託し続けて、過去の選択を悔やみ続けて、今を生きている事を忘れる。
幸福は今にしかない。そしてそれは今の姿勢が作る。_為末大

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