JMMという、村上龍が編集長を務める無料のメールマガジンがある。
毎週、様々な分野の専門家が時事問題や特定のトピックについて寄稿する形で配信される。
最近は原発による放射線被害、アメリカの政権問題に関する内容が多い。
このメールマガジン、内容がシリアスで厳密で、読むのに疲れる。笑
でもたまに、村上龍本人のコメントや、新刊の案内、主催するイベントの告知なども配信される。
「歌うクジラ」の文庫本発売を知ったのもこのメールマガジンだ。
そして最近になって、『MISSING 失われているもの』というタイトルで本人による文章が届くようになった。
この『MISSING 失われているもの』こそが、村上龍が新たに始めた「メール配信型の小説」だ。
以下「村上龍電子本製作所 Facebookページ」より抜粋
”村上龍です。
ずっと以前から、電子メールで小説を発表できないかと考えていました。
JMMをやる前、電子メールを使いはじめたころからです。
原稿は、大昔は手書き原稿を編集者に手渡し、昔はfaxで送り、90年代後半くらいから、メールでの送信になりました。
編集者数人にCCして送信するのですが、1000人にCCしたら、1000人に読んでもらえるんだな、といつも思っていました。
電子メールでの小説配信に関しては2つのことを決めていました
●無料配信
●メールというメディアにフィットしたコンテンツ今日からはじまりました。淡々と連載を続けようと思います。”
本日が第一回目の配信日だ。
どうでもいいけどSponsored by BVLGARIってすごいな。
どれくらいの頻度で更新されるのかは分からないが、定期(or不定期)に村上龍から小説の続きがメールで送られてくる。
こんな素晴らしいことってあるのか。
そしてこういう新しい方法で、新しいことを始めようとする村上龍にただただ心酔するばかり。
思えば彼は、常に既得権益との戦い、新しい価値観の創造といったものを体現してきた気がする。
自身で電子書籍制作会社を立ち上げ、「カンブリア宮殿」という経済番組でインタビュアーを務め、小説家という枠にとらわれない活動をしている。
「既得権益との戦い」というものは、「既得権益を持たざるもの」すなわち「若者」「弱者」に与えられたある種の宿命のようなものだと思っていた。
でも村上龍は今でも既得権益と戦い続けている。
コインロッカー・ベイビーズのような小説を書いた人間が孫正義に自身の番組でインタビューをする。
それはものすごくクールで、異様な光景にも思えた。
いくつになっても新しいことに挑戦する準備と意志のある人間になりたい。
村上龍のように。