兼ねてより行ってみたかった美術館、「MIHO MUSEUM」に行ってきました。この美術館を知ったのは、MITラボ教授、石井裕さんのこちらのツイートを見て。
【感動要約】宇治平等院:鳳翔&飛天群、滋賀MIHO美術館:遮光器土偶宇宙、円成寺:運慶大日如来像足裏美、浄瑠璃寺:九体阿弥陀&矜羯羅童子像、角屋文化博物館:格子幾何宇宙美、西本願寺:飛雲閣摘星楼&白書院梅松空間、祇園ほりべ:蒼空。修学旅行深謝 ▶ @hashimoto_tokyo
— Hiroshi Ishii石井裕_BOT (@ishii_mit_BOT) June 13, 2014
ぱっと見何が書いてあるのか分かりにくいですが、よく見るとそこには「滋賀MIHO美術館」の文字が。滋賀に住んでいながらその存在をまったく知らなかったのですが、石井さんが「感動」と表現するからにはきっとすごいに違いない!ということで足を運ぶことに。結果、期待通りというか、色んな意味ですごかったです。
MIHO MUSEUM(ミホ・ミュージアム)とは
MIHO MUSEUM(みほ みゅーじあむ)は、滋賀県甲賀市信楽町田代にある滋賀県の登録博物館。運営は、公益財団法人秀明文化財団。
神慈秀明会の会主・小山美秀子のコレクションを展示するため、1997年(平成9年)11月に開館。
コレクションは、ギリシア、ローマ、エジプト、中近東、ガンダーラ、中国、日本など、幅広い地域と時代に渡る優品2000点以上が含まれている。コレクション形成に数百億円をかけたともいわれ、日本にある私立美術館のコレクションとしては有数のものである。_出典:Wikipedia
上述の通り、この美術館は神慈秀明会(しんじしゅうめいかい)という宗教法人が運営する美術館で、会主である小山美秀子氏(こやまみほこ)のコレクションを展示するために建てられたものです。私設の美術館ということは、個人のコレクションを披露するための場ということになるのですが、その規模たるやものすごい。
このミホ・ミュージアムは「桃源郷」をイメージして造られており、レセプション棟と美術館棟が離れて建てられています。その二つを繋ぐ道中にこそ、この美術館が「桃源郷」と呼ばれる所以があります。
美術館へは、桜並木道、トンネル、吊り橋、この3つをくぐり抜けて到着します。歩いて8分ほどの距離なのですが、そこはまさに異世界というか、独特の世界観が広がっていました。レセプション棟〜美術館棟までは無料の電気自動車(カートみたいなの)が回遊しているのですが、少なくとも行きは絶対に歩いたほうがいいです。そんなにたいした距離ではないし、車でサッと通り過ぎるのはあまりにももったいない。
トンネルの内部はコンクリート打ちっぱなしではなく、わざわざ銀色の板を内側に張り付けているそうです。
トンネルにまつわるこだわりは、こちらに詳しく書かれています。
美術館の入り口から見た吊り橋。こうして見ると、うそみたいに青い空。
ルーブル美術館の設計にも携わった世界的建築家、I・M・ペイ氏による建築設計
タイトルにも掲げたとおり、この美術館はなかなかの山奥にあります。自然の景観を損なわずに同化させるため、建築容積の80%以上が地中に埋められているそうです。
その建築設計を担当したのが、I・M・ペイという建築家。ルーブル美術館のガラスのピラミッド、ワシントンのナショナルギャラリー東館などを設計したことで知られる著名な建築家です。
「自然との融合」をテーマに掲げる美術館なだけあって、建築物だけでなく、そこに至るまでの道やそこから見える景色にもものすごくこだわりが感じられました。本当に、山まるごとが美術的な空間みたい。
パンフレットによると、
とあり、まあとにかくでかい。
美術館棟は、天井がガラス張りになっており、天井から差し込む光と外に望む雄大な景色で、とても開放感がありました。その日は快晴だったこともあり、夕暮れ時や日が沈んだときにはまた変わった表情を魅せるのだろうなと思いました。
この美術館の歴史を紹介するビデオを放映していたので見てみたのですが、この美術館の建設は一筋縄ではいかなかったそうです。というのも、この美術館を建てようとしていた場所が、重要なんとか(忘れた)という地域に指定されていて、勝手に建造物を建てたり、ましてトンネルや吊り橋なんかもってのほか!という状態だったそう。
I・M・ペイ氏と関係者の根強い交渉で、最終的には建築の許可が下りたのですが、施工から完成まで、実に5年近くを要したそうです。この紹介ビデオはなかなか興味深い内容だったので、もし行かれた際には是非見てください。
特に印象に残った点
私が今回、このミホ・ミュージアムを訪れて特に印象に残った点は2つあります。
まずひとつは、先にも述べたレセプション棟〜美術館棟までの道のり。桃源郷という架空のものを、訪れた人にイメージ、体感してもらうためには、そこまで「辿り着く」という過程がなければなりません。それを、この桜並木道から始まる道のりは見事に体現しています。これだけの規模で、あるコンセプトを表現されたものを見ると、ただただ圧倒されます。
建築物や、展示されている美術品ももちろん素晴らしいものばかりなのですが(残念ながら私にはその価値を正しく理解できないけれど)、私が一番感動したのは美術館に至るまでの道のりでした。この美術館を訪れた人の中には、私と同じような感想を持つ人が少なくないのではと勝手に思っています。
もうひとつ。こちらはこのエントリの趣旨とは異なるのですが、これだけの規模で、私設の美術館を世界的な建築家に建てさせることのできる人っていったい何者なんだ、ということ。まあ何をしている人かは書いてあるとおりなのですが、「そんなことを可能にする人がこの世には存在するんだ」というのが正直な感想でした。
世の中にはいったいどれくらい、それほどの財力や権力、影響力を持った個人や組織が存在しているのだろうと、少し怖くなったのも事実です。そういう「圧倒的な力を持った人々の存在」というのも、今回この美術館を訪れて感じたところのひとつです。
私はきっと、美術館そのものや、展示されている作品が好きなのではなく、そういった空間そのものが好きなんだなと気付きました。総合的に表現されたものと言うか、そこに来ているお客さんやその日の天気まですべてを含めた、「美術館的」空間が。
ミホ・ミュージアムは今まで訪れた美術館の中で間違いなくトップ3に入る素晴らしさでした。これを機に、美術館巡りにはまりそうです。