以前、『エクセルニンジャに学ぶ。美しいエクセル表の作り方」というエントリーでも紹介したように、エクセルデータは見せ方によってその理解度や明確さに大きな違いが生まれる。
私は仕事で毎日エクセルを使用し、さまざまな資料を作成したり確認したりする。単なる資料として受領し、保存するだけのデータもあれば、毎日更新し、変更を加えるデータもある。
先のエントリーでも紹介している、慎泰俊さんが書かれた「外資系金融のExcel作成術」という書籍で、「外部にファイルを送る前のお作法」として以下のようなことが挙げられていた。
やっておかないとできなかった時のリスクが大きいもの
- ファイルのプロパティを開き、作成者の名前を確認する(だれが資料を作ったかが分かってしまうため)
- 外部に出すファイルにはパスワードをかける
できていないと「なってないなあ」と思われるもの
- すべてのシートについて、カーソルをA1(シートの左上)に合わせて保存する
- ファイルを開いて印刷ボタンを押せば、問題なく印刷できるよう改ページを調整しておく
- ホチキスどめが想定される資料を送る際は、ホチキスができるだけの余白を用意しておく
- 印刷がきちんとされるか確認する。(文字が途切れたりしないか)
PE(プライベート・エクイティ)という慎さんの仕事柄もあるのだろうけれど、やってる人はここまでやっているんだなあと感心した。
私も、日々仕事でエクセルデータを扱う身として、自分なりに気をつけていることがあるので今日はそのことについて書いてみたい。
カーソルはA1のセルに合わせて保存する
これは慎さんも書かれていることだが、ファイルを保存する前に必ずカーソルをA1に合わせておく。こうすることで、ファイルを開いたときの見え方がスッキリするのと、直前までどこを編集していたのか相手に気づかれないという利点がある。
私はこれを、今の会社に入社したばかりの頃に先輩から教わった。最初は「そういうものなのか」と、特に深く考えもせずずっと続けたきたのだけど、おかげで習慣としてすっかり身についてしまった。先方へ送付するデータだけでなく、単に保存しておくだけのファイルにもこの原則を適用している。
不要なシートは削除する
エクセルは新規ブックを開くと、デフォルトでシートが3枚作成された状態になる。だが、実際に使用するシートは1枚目(いちばん左のシート)だけということが多い。そういった先入観があるからなのか、2シート目以降にもデータが記載されていても見落しがちだ。以前、2シート目以降の内容確認を完全に怠り、とんだ失態を犯したことがある。
※画像はイメージです。(Boketeより転載)
そんな苦い経験から、シートが複数枚ある場合は必ずすべてのシートを確認するよう、心掛けるようになった。だが、先に述べたようにほとんどは空白のシートがそのまま残っているだけということが多い。3シート目まで確認して、「何もないんかい」というムダな時間を相手に与えるのは嫌なので、使用していないシートはすべて削除してから送付するようにしている。
私のようにすべてのシートをチェックするという人は稀なのかもしれないが、相手に極力ムダな時間や手間を掛けさせたくないため、このようにしている。
もし複数シートにまたがってデータを記載する場合は、シート名を変更して目につきやすくするなどの工夫を行う。
印刷範囲を設定する
これも慎さんが本の中で述べられていることだけど、いきなり印刷ボタンを押しても問題なくプリントアウトできるようにしておくこと。特に、会議やミーティングの資料など、印刷されることが予想される場合は特に気をつける。ページが複数枚に分かれる場合は、変なところで分割されないよう、ページ割りにも気を使う。
また、セル幅がギリギリだったりすると、印刷した際に「#####」と表示されてしまうことがある。事前にプレビューで確認し、表示がおかしくならないかも確認しておくとよい。
以上の3つが、私がエクセルのデータを作成する際に特に気をつけているポイントである。ここに挙げたようなことは、実際にはほとんど気づかれないことの方が多いかもしれない。気付いたとしても、発信者が意図してそうしているとは思わないかもしれない。
けれども、こういったことは気付かれる・気付かれないといった問題ではなく、情報の発信者が、どこまで受け手のことを考えられるかという姿勢の問題なのだ。受け手が少しでも楽に、スムーズに次の作業に取りかかれるように、お膳立てをしておくということ。
私はこれができていないからといって、「分かってないなあ」とは思わないけれど、でも同じようなことを実践している人を見ると、「そうそう、やっぱりそうだよね」と妙な親近感を抱く。
これは私の個人的な観測だけど、仕事の出来る人というのは、人に気付かれないような些細なことでも徹底してやっている。目立つことよりもむしろ、目立たない部分に相当な努力を払っている。
私もそういった人たちを見習って、些細なことにも注意深く、思慮深く取り組んでいきたい。
皆さん、いろんな「エクセルの作法」をお持ちのようでおもしろい。